投資信託の平均利回りとは?目安や計算方法なども解説

投資信託の平均利回りとは?目安や計算方法なども解説

NISAやiDeCoで投資信託を選ぶ際、「平均利回り」を確認する人も多いのではないでしょうか。適切な投資判断を下す上で、平均利回りについて知っておくことは重要です。

今回は、平均利回りの意味や計算方法、利率など、似た用語との違いについてわかりやすく解説します。平均利回り以外に注意すべき投資判断のポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

mokuji目次

  1. 平均利回りとは、投資額に対する平均的な収益の割合のこと
    1. 平均利回りが高い商品を選んだほうが良い?
  2. 平均利回りと混同しやすい用語
    1. 利率と平均利回りの違い
    2. トータルリターンと平均利回りの違い
    3. パフォーマンスと平均利回りの違い
    4. 騰落率と平均利回りの違い
  3. 投資信託の平均利回りの目安
  4. 平均利回り以外に考慮すべき投資のポイント
    1. コスト
    2. 騰落率
    3. 純資産総額
    4. 非課税制度の適用有無
  5. 平均利回りは投資信託の選定に役立つ指標のひとつ
 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

平均利回りとは、投資額に対する平均的な収益の割合のこと

平均利回りとは、投資元本が年平均でどれだけの収益を上げたかを表す指標です。
平均利回りの計算方法は、下記のとおりです。
<平均利回りの計算式>
平均利回り(%)=(譲渡損益+分配金)÷運用年数÷投資金額×100
例えば、月2万円を20年間積み立てた場合、投資金額は合計480万円です。

譲渡損益(株式や不動産など、資産を売却したときの利益や損失)と分配金の合計が300万円の利益だったとすると、平均利回りは300万円÷20年÷480万円×100=3.125%となります。

平均利回りが高い商品を選んだほうが良い?

平均利回りは投資商品を選ぶ上で重要な指標ではあるものの、「高利回り=良い投資商品」というわけでもありません。

なぜなら、高利回りで多くのリターンが期待できる投資商品は、相応にリスクも高いと考えられるためです。

高利回りの投資商品を選ぶ場合でも、分散投資によってリスクを軽減させることが大事です。

例えば、投資地域(全世界や先進国、新興国)の分散、投資対象(株式や債券など)の分散、積立投資による購入時期の分散など、できるだけリスクを回避するための投資判断が求められます。

資産の大半を平均利回りの高い投資商品に集中させてしまうと、市場の急変によって大きな損失を被る可能性が高くなるでしょう。

平均利回りと混同しやすい用語

平均利回りと混同しやすい用語

投資信託の利益や収益率を表す用語には、平均利回りのほかに「利率」「トータルリターン」「パフォーマンス」「騰落率」といったものがあります。

適切な投資信託を選ぶためにも、用語の意味を理解しておくことが大切です。

利率と平均利回りの違い

利率とは、額面金額に対して毎年受け取る利息の割合のことです。

債券や預金によって得られる利息収入について、利率という言葉が用いられます。
利率が表しているのは、利息のみに限った収益の割合です。

一方、平均利回りは投資から得られる総収益の割合を、投資期間で割った指標です。

投資信託でいえば、分配金や譲渡損益なども含めたトータルの収益が考慮されています。

トータルリターンと平均利回りの違い

トータルリターンとは、一定期間にわたる投資の総合的な収益のことを指します。

元本に対して得られたすべての利益(利息、配当金、売却益など)を含めたものがトータルリターンです。トータルリターンを算出する際には、下記の計算式を用います。
<トータルリターンの計算式>
トータルリターン(円)=(投資によって得た利益−コスト)−投資元本
一方、均利回りは、投資元本に対する利益の割合の平均を表しています。

また、トータルリターンが金額(円)であるのに対して、平均利回りは割合(%)を示している点が大きな違いです。

総合的にどれだけの収益を得られたかは、投資元本によって異なります。

平均利回りが高くても、投資元本が少額であれば、トータルリターンの総額はそれほど大きくなりません。

パフォーマンスと平均利回りの違い

パフォーマンスとは、ベンチマーク(投資環境を測るための指標)と比較した場合の運用実績のことです。

平均利回りが高い商品であれば、パフォーマンスも良好とは限らない点に注意する必要があります。

例えば、日本株式を対象とした投資信託の場合は、日経平均株価やTOPIXなどが主なベンチマークです。

ある投資信託の平均利回りが7%でベンチマークの平均成長率が5%の場合、この投資信託は高パフォーマンスを実現しています。

反対に、ベンチマークの平均成長率が9%だったとすれば、ベンチマークよりも2%平均利回りが低いことからパフォーマンスが良いとはいえません。

このように、パフォーマンスはベンチマークを基準とした相対的な運用実績のため、同じ平均利回りであっても商品ごとにパフォーマンスに差が生じる可能性があります。

騰落率と平均利回りの違い

騰落率(とうらくりつ)とは、一定期間における投資信託の基準価額の上昇率と下降率を表す指標のことです。

例えば、基準価額1万円の投資信託が1年後に1万1,000円になったとすれば、騰落率は10%となります。
このように、騰落率は投資信託の過去の運用実績を確認し、投資信託を購入すべきか判断する際の重要な指標のひとつです。

一方、平均利回りには、基準価額の変動だけでなく、分配金なども含まれています。
つまり、平均利回りは分配金や譲渡損益などを含めた全体の収益を示す指標です。

平均利回りが良さそうに見えても、その投資信託の基準価額があまり上がっていない、つまり騰落率が低いという場合があります。

よって、投資信託を選ぶ際には、平均利回りだけでなく騰落率もあわせてチェックしておくことが重要です。

投資信託の平均利回りの目安

投資信託の平均利回りの目安

投資信託の平均利回りは一般的に3〜10%程度といわれていますが、ここ数年は下落局面がありながらも、全体としては右肩上がりの傾向が見られます。

そのため、人気銘柄を中心に、平均利回りが15%を超えています

参考までに、新NISAの「つみたて投資枠」で人気のある投資信託の平均利回り(5年)をまとめたのが下記の表です。
なお、ここでは平均利回りとリターン(年率)を同義として扱っています。

■新NISAで人気の投資信託の平均利回り

ファンド名

平均利回り
(5年)

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)

21.08%

iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド

20.68%

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)

17.36%

eMAXIS Slim先進国株式インデックス

18.96%

iFree JPX日経400インデックス

12.75%

<購入・換金手数料なし>ニッセイJPX日経400インデックスファンド

12.65%

eMAXIS Slim全世界株式(3地域均等型)

13.55%

※2024年9月13日時点
※楽天証券「投信スーパーサーチ

このうち、主に米国株式に投資するファンドは、平均利回りが20%を超えています。
そのほか、全世界株式や日本株式に投資する投資信託の平均利回りも、5年平均で12〜15%程度と好調です。

平均利回り以外に考慮すべき投資のポイント

平均利回り以外に考慮すべき投資のポイント

投資信託を選ぶ際には、平均利回り以外にも押さえておきたいポイントがあります。
特に、下記の4点は重要です。

コスト

投資信託の売買や運用にかかるコストは、「販売手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」などです。

このうち、販売手数料に関しては、大手証券会社では無料であるケースが多いといえます。
そのため、投資信託を選ぶときには、信託報酬と信託財産留保額をチェックしておくことが重要です。

「信託報酬」とは、投資信託を運用会社や販売会社に管理・運用してもらうための経費に相当します。
信託報酬は、信託財産の純資産総額に対して一定の割合が毎日差し引かれるもので、その割合は投資信託によって異なります。
投資対象が同様であれば、信託報酬が安い投資信託を選んだほうが効率的に資産形成できるでしょう。

「信託財産留保額」は、投資信託を解約する際に支払うコストです。
投資信託によっては、信託財産留保額がかからないケースもあります。

「信託財産留保額」が設定されている場合には、投資信託説明書(交付目論見書)に記載されていますので、あらかじめ確認しておくことが大切です。

騰落率

投資信託の価格がどの程度上昇・下落したかを把握するには、騰落率を確認しておくことも重要なポイントです。

株式や債券の騰落率は1日単位で評価されますが、投資信託の場合は中長期の騰落率についても評価されます。

具体的には、1ヵ月・3ヵ月・6ヵ月・1年・3年・5年の騰落率を確認した上で、購入すべきか判断することが可能です。

ただし、騰落率は上がっていれば良い、下落しているから悪いと単純に判断できるものではありません。

例えば、騰落率が上がっている商品の価格がさらに上がり続けることもあれば、一転して下落することもあります。
また、騰落率が下がっている商品であっても、ある時期から回復傾向へと転じるケースは少なくありません。

このように、騰落率は過去の一定期間における価額の変動幅や安定性をチェックする際に役立つ指標であり、将来の動向を直接予測するものではありません。

ただし、将来的なリスクや変動をある程度予測する材料として活用することは可能です。

純資産総額

純資産総額とは、投資信託の大きさを表す指標のことです。

例えば、単純計算で1,000人の投資家が1人100万円ずつ投資した場合、その投資信託の純資産総額は10億円となります。

純資産総額が大きい投資信託ほど投資家から人気があり、多くの人が投資していると考えられます。

なお、純資産の規模が大きくなると、経費率が下がる傾向があります。
例えば、運用報告書の作成コストは、投資信託の規模にかかわらず一定額が発生します。

純資産が大きければ、それだけ一人あたりのコスト負担が軽減するということです。運用にかかるコストが下がると、信託報酬が下がるケースもあるでしょう。

非課税制度の適用有無

非課税制度を利用することにより、投資信託のリターンを増やすことも可能です。

代表的な非課税制度として、iDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)があります。
投資信託によっては、iDeCoやNISAの対象商品になっているため、非課税で運用可能です。

iDeCoとは、運用益が非課税となる私的年金のことです。
掛金が全額控除されるので、所得税や住民税の節税効果が得られます。

iDeCoで運用する商品は自分で選ぶことができ、大半が投資信託です。
長期にわたって少額ずつ投資信託を購入していくことにより、長期・積立・分散投資という基本に忠実な投資ができます。

NISAは、少額から投資をする人を対象とした非課税制度です。

NISAで定められている非課税投資枠の範囲内で行った投資に関しては、売却益・配当・分配金がいずれも非課税です。

NISAの非課税投資枠には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があります。

つみたて投資枠の年間投資枠は120万円、成長投資枠の年間投資枠は240万円で、2つの投資枠は併用可能です。非課税保有限度額(総枠)は1,800万円となっており、そのうち成長投資枠は1,200万円までとなっています。

NISAを利用して投資信託を購入することにより、投資で得た利益に対する税金の負担が軽減されるため、手元に残る資産を増やせるという仕組みです。

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平均利回りは投資信託の選定に役立つ指標のひとつ

投資信託を選ぶ際には、平均利回りが参考になります。

高利回りの商品は魅力的に映るものの、その分リスクを伴うケースが多いので、さまざまな商品を組み合わせた分散投資を検討することが大切です。

また、商品の選定に際しては、平均利回り以外に売買コストや運用コストについても考慮する必要があります。信託報酬や信託財産留保額は投資信託ごとに異なるので、商品を比較するときに重視したいポイントのひとつです。

投資信託を購入する際にはiDeCoやNISAなどの非課税制度の活用も検討しましょう。

ただし、iDeCoもNISAも1人1口座しか開設できません。対象となる投資信託の数についても、金融機関によって異なります。複数の金融機関を比較検討した上で、自分に合った金融機関を選ぶことが大切です。

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 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。編集プロダクションで、Web・紙媒体問わず主に金融系コンテンツの制作を担当後、HRテック企業に制作ディレクターとして入社。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

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