国債とは? 個人で買える国債の基本のしくみ&メリット・デメリットを紹介

投資に興味はありつつも、「株や投資信託など損するリスクがあるものは怖い」と感じる人もいるのではないだろうか。そんな人に向けて、投資の入り口として「個人向け国債」という選択肢を紹介する。1万円から購入でき、基本的には元本(購入時の金額)が保証され、定期預金よりも高い金利で利子がもらえるなど、初心者でも始めやすい条件が魅力だ。そこで、ここでは国債とは何か、どこで購入できるのか、メリット・デメリットは?といった特徴を詳しく見ていこう。

国債とは

「国債」とは、日本政府が発行する債券のことで、よく「国の借金」ともいわれる。国債は、公共工事など、さまざまな活動を行う際に資金を調達するために発行されるほか、税収だけでは足りない部分を国債で補っている。

国債は、銀行や証券会社など金融機関の窓口やインターネット経由で購入できる。さらに、ペーパーレス化されて口座の記録上での取り扱いとなるため、より身近に扱えるようになっている。

国債は種類によって、2年、3年といった比較的償還期限が短いものか、10年、中には40年といった超長期の 償還期間(満期までの期間)があらかじめ設定されていて、購入者は満期になるまで利子を定期的に受け取る。そして満期を迎えると元本(額面金額という)が戻ってくるという仕組みだ。「国への融資」であり、国が利子と元本を保証しているので流通数も多く、株式や投資信託など数ある投資商品の中でも安全性はトップクラスといわれている。

大きなリターンを求める人には物足りないが、一般的な定期預金よりも金利が高めなので、投資に興味があるがリスクが怖い人の投資の入り口として向いている。

なお、日本で現在発行されている個人投資家向けの国債は、大きく分けて「個人向け国債」と「利付国債(新窓販国債)」の2種類となる。
債券にはいろいろな種類がある
債券には、国債のほかにも地方公共団体が発行する「地方債」、民間企業が発行する「社債」がある。国債や地方債を、公的な債券として「公債」と分類することもある。ちなみに、国債は日本だけに限られた仕組みではなく、外国政府が発行したものは外国債と分類され、日本人も買うことができるものもある。

国債の仕組み

発行の仕組み

日本政府(財務省)から発行された国債は、証券会社や銀行 といった金融機関を通して販売されている。
【国債の仕組み】
発行元「日本政府」→販売窓口の「金融機関」→購入(融資)する「投資家」
日本政府から投資家へ「利子」(半年ごと)が支払われる、満期時には「元本」が償却(返却)される。

発行の頻度と募集期間

国債は、基本的に毎月発行されている。ただし、いつでも買えるというわけではなく、1カ月の中で募集期間が決まっている。各月の発行スケジュールは財務省のホームページで公開されているが、例えば2022年4月の場合は

募集期間 4月7日〜28日 / 発行日 5月16日

となり、この募集期間は月ごとに微妙に異なっているので、購入するときには注意しよう。

額面金額と発行金額

債券を購入・売却するときに重要なのが、「額面金額」と「発行金額」の違いだ。
額面金額 債券を購入時の購入単位となる価格。満期を迎えたときに返済される金額。

発行金額 債券発行時の実際の価格、額面金額とは異なる場合がある。額面金額は100円だが、実際の購入価格は発行金額によって上下する。ただし、償還金額には額面金額が適用される。
国債の1つである「個人向け国債」では、額面金額100円=発行金額100円で固定されているので、償還日に受け取る金額は実際の購入額と同じになる。

償還期間(満期までの期間)

ここでの償還とは、国債の発行者(国)が国債の保有者に対して、預かったお金を国債の保有者に返却すること。つまり、国債を購入して償還期間まで持ち続けると額面金額が戻ってくる仕組みだ。

償還期間はあらかじめ設定されていて、国債の種類ごとに異なっている。「2年」や「3年」などの短期から「10年」またそれ以上の長期まで選ぶことができる。

利率と利回り

利子の大きさに直接影響する金利。国債の場合、金利は「固定型」「変動型」の2つのタイプがある。また、国債の種類ごとに“基準金利”が設定され、それを基に利率(クーポンレート、表面利率、適用利率ともいう)が算出されている。
 
@「額面金額×利率=年間で受け取れる利子の金額」となるが、現在発行される国債では、利子が半年に1回(年2回)支払われるので、1回ごとに支払われる利子は、「@の金額×1/2」となる。
固定金利型 満期まで利率が変わらないタイプ。購入時に利子がいくら受け取れるのかが分かる。金利は募集開始日の前営業日に公表される。

変動金利型 半年ごとに適用利率が変動するので、それに伴って利子の金額も上下する。ただし、最低金利が0.05%に保証されている。
日本の国債では現在発行されていないが、利子の支払いがない「割引債券」というものもある。これは、あらかじめ利子相当額が差し引かれた金額国債を購入、償還日を迎えると額面金額で受け取ることができるというもの。

もう1つ、投資家の収益の大きさを表す「利回り」という用語がよく使われる。これは、投資金額に対して1年当たりどれくらいの利益を得られるかという割合(%)を示したもの。

国債のメリット

国債には、メリットとデメリットの両方がある。種類が豊富なので、どういった国債を選ぶかによっても変わってくるが、まずは共通していえる特徴を挙げてみよう。

メリット@ 種類が豊富

償還期間が「短期〜長期」、金利は「固定型」か「変動型」かなどの種類が豊富で、自分に合ったものを選べる

メリットA 定期預金と比較して金利が高い

メガバンクでの定期預金の金利が5年で0.002%なのに対し、個人向け国債5年固定の場合、税引き前の表面金利は0.05%(最新情報は財務省ホームページ『国債金利情報 』)となっている。株式のように大きなリターンを求める人には物足りないが、定期預金よりはリターンがあると見ていいだろう。

メリットB 国が破綻しない限り、利息や元金は確実に受け取れる

国債の信頼度が高いといわれる理由の1つに、満期まで持っていれば基本的に利息や元金は確実に受け取れるという点がある。また、銀行預金の場合、万が一預け入れている銀行が破綻した際の保証額は1,000万円とされている(ペイオフ制度)。一方で、もし国債を購入した金融機関が破綻しても、保有している国債は保護される。
信用度を計る“格付け”

国債を含む債券は、民間会社によって「格付け」されている。これは「きちんと利息と元本が支払う能力があるか」という債券の信用度を計るもの。日本では金融庁の登録を受けた7社が信用格付けを行っている。AAA(トリプル・エー)からC(シングル・シー)までの9段階で評価されることが多く、ランクが高いほど信用度も高い。日本の国債は、信用力が高いとされるAランクを維持している。

メリットC 買付手数料がかからず、口座開設・維持手数料は無料

株式や投資信託といった金融商品は、通常購入時に「販売手数料」がかかる。だが、国債ではこういった買付手数料はなく、また国債を買ったことを記載する専用口座の開設・維持手数料が無料(ゆうちょ銀行を除く )なこともメリットだろう。

ただし、中途換金時には手数料がかかるほか、利子は通常の株式などと同様に所得税・復興特別所得税・地方税20.315%課税されるので注意が必要だ。

メリットD 債券はペーパーレスで取り扱いやすい

国債というと、大きめの紙幣のような紙券をイメージする人もまだまだ多いだろう。実は国債も2003年から電子化され、ペーパーレスになっている。口座の記録でやりとりすることになるので、偽造や盗難・紛失の心配がなく、決済の迅速化につながっている。

国債のデメリット

一方で、国債にはデメリットもあるので、購入する前には良い点・悪い点を検討した上で、自分の資産形成プランに合っているかどうかを判断しよう。

デメリット@ 保有することで発生する収入(利子)に対して税金がかかる

これは、ほかの債券や投資信託などの定期的に収益が得られる金融商品に共通することだが、利子には税金20.315%がかかるので注意が必要だ。

また、国債の1つである「個人向け国債」は、満期になる前に換金(解約)すると中途換金手数料がかかってしまう。

デメリットA 大きなリターンは期待できない

定期預金と比べると利率は高いものの、投資信託や株式などの金融商品に期待できる譲渡益や配当金に比べると、利子による収益は少なくなる。

そのほか、債券市場で売買ができる「利付国債」という国債では、売却値段が購入時より低くなるなど、国債の種類ごとに特有のリスクを抱えていることもある。

個人で買える2種類の国債 「個人向け国債」と「利付国債」

個人で購入できる国債には、大きく分けて「個人向け国債」「利付国債(新窓販国債)」の2種類がある。それぞれの特徴を詳しく見ていこう。

個人向け国債の特徴とメリット・デメリット

名前の通り、個人向けの国債で、購入対象は個人のみ(法人は買えない)。

個人の投資家が買いやすいように最低購入額がより少額に設定され、金利が最低0.05%保証されているのも初心者に向いている理由の1つだ。個人向け国債には、変動金利型で償還期間が10年の「変動10年」、固定金利型で償還期間が5年の「固定5年」、同じく固定金利型で償還期間が3年の「固定3年」といった3種類が毎月発行されている。

3つの個人向け国債の概要を見てみよう。
個人向け国債の種類と特徴

満期前に換金(解約)をするには、制限があることが特徴的。発行から1年間は原則解約できない。また、1年目以降も解約する際には 「中途換金調整額」として「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」 が差し引かれることになるので、途中換金する可能性がある人は元本割れするリスクがあるので 注意が必要だ。

ただし、売却先は国なので、債券の額面金額が市場の動向に影響されることなく受け取れる。
メリット
・1万円から(1万円単位)と比較的少額から購入できる
・金利が固定型と変動型から選べる。
・金利変動型の場合も、最低金利0.05%が保証される。

デメリット
・発行から1年間は換金(解約)することができない。
・1年経過後でも、満期前に解約すると「中途換金調整額」として「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」がかかる。

利益が出るためには……
・満期まで待つ

損が出る場合は……
・国が財政破綻して、債務不履行(デフォルト)に陥ると利子・元本が受け取れなくなる
・短期で中途換金してしまった場合
このほかに個人での保有ができないが、物価の上昇・下落などにより、元本そのものが変動する「物価連動国債」(満期10年)などもある。

利付国債(新窓販国債)の特徴とメリット・デメリット

利付国債とは“定期的に利子を受け取れる国債”だが、特に現在は「新窓販国債」として販売されているものを指すことが一般的だ。毎月発行されるが、市場動向によっては発行されない場合もある。

現在発行されている新窓販国債は固定金利制のみで、償還期間が異なる「2年固定」「5年固定」「10年固定」の3種類がある。

概要は下の通り。
新窓販国債の概要

購入された国債は、償還日を迎えると額面金額(購入時の金額)が支払われる。ただし、市場でいつでも売買ができる。基本的には買い手が多いと債券の金額は上がり、売り手が多いと下がるので、市場動向によって利益を得ることも期待できるが、逆に元本割れしてしまうリスクもある。

固定金利制なので、利子の額は変わらないが債券自体の売買価格が変動するというのが、個人向け国債と大きく異なる点だ。
メリット
・いつでも中途解約可能な国債。ただし市場金利で売却するので、満期を待たずに解約すると元本割れのリスクもある。
・市場動向により償還日に元本増の可能性がある。

デメリット
・5万円から(5万円単位)の購入と、個人向け国債よりも高額。
・取り扱い機関が少ない。

利益が出るためには……
・満期まで待つ。
・売却時の市場価格が購入時より高いこと。

損が出る場合は……
・国が財政破綻して、債務不履行(デフォルト)に陥ると利子・元本が受け取れなくなる。
・売却時の市場価格が購入時より低い。

「個人向け国債」は“ローリスク商品の代表”! 2つの国債を比較

国債自体、株や投資信託などのほかの投資と比べてリスクは低いが、さらにリスクを軽減させたい人にとっては「個人向け国債」が向いているといえる。
「個人向け国債」と「利付国債」の比較表

分類

個人向け国債

利付国債

購入対象者

個人のみ

制限なし

償還期間

変動型 3年・5年/固定型 10年

2年・5年・10年

金利のタイプ

変動/固定

固定

発行回数

毎月

毎月(※発行されないこともある)

購入単位

1万円

5万円

購入上限

なし

1申し込み3億円

利子の受取頻度

半年に1回

半年に1回

変動金利型の利率

半年ごとに変動

市場動向によって発行ごとに変動

最低金利保証

0.05%

なし

中途解約可能期間

1年目以降

制限なし

中途換金調整額

直前2回分の各利子(税引前) 相当額×0.79685

なし

売却先

国(財務省)

債券市場

市場動向によって国債の売却価格に変動がある「利付国債」と比較すると、「個人向け国債」の強みは次の通り。

 ・国が国債を買い取るので「買い手が付かない」ということがなく、基本的には元本割れのリスクがない。
 ・購入単位が1万円と小口で買い付けることが可能なので、比較的購入しやすい。
 ・利付国債にはない「最低金利」が保証されており、金利0.05%よりも下がらない。

こうした理由から、「個人向け国債」はローリスク商品の代表だともいわれている。

最後に注意点をもう一度確認しておこう。 個人向け国債は発行から1年経過するまで中途換金ができない。また、1年経過後であればいつでも中途換金できるが、満期前に売る(中途換金する)場合には、「中途換金調整額」として直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685の手数料を支払う必要があるので、中途換金の可能性がある人は購入前に吟味しよう。

国債に向いているタイプは? 特徴を理解して、資金手段として活用しよう

国債は「投資に興味あるけれどリスクを抑えたい」という人や、「定期預金の利息をもう少しプラスにしたい」と思っている人に向いているといえる。国債の特徴をしっかりと理解して、資金形成の手段の1つとして活用していこう。
※今回の特集内で紹介している情報やデータは2022年12月時点のものです。変更される場合もありますので、ご注意ください。

この記事の監修者:市川雄一郎

生活者目線の自由なトークが持ち味。物腰やわらかで明快な講義は、全国に多数のファンがいる。
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。1969年生まれ。グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。「日本経済新聞」「日経ヴェリタス」「朝日新聞」「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などへの原稿執筆・コメント提供のほか、ラジオ日経などのメディア出演も多数。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。
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