株主優待、お得な銘柄選びのポイントから運用のコツまで

企業から投資家へ“お礼”として贈られる株主優待。近年では株主優待を目的に投資する人も多く、優待内容は、自社商品や割引券、金券などさまざま。ここでは、“よりお得な”株主優待を見分けるための銘柄選びのポイントや、優待銘柄をお得に運用するための方法について紹介する。

株主優待のお得度は、“優待利回り”で見極める

株主優待で銘柄を選ぶときのポイントはさまざま。「普段利用するサービスの割引券」「株主優待でしか入手できない限定品」「使い方が限定されないQUOカード」などの欲しいものを基準に選ぶ人もいれば、「5万円以下で優待を受け取れる」など予算をポイントに選ぶ人もいるだろう。

そんな銘柄選びの基準の1つとして、ここで解説するのは、株主優待の“お得度”で選ぶ方法だ。お得度というのは、“この株主優待は、株式購入額に対して年間でどれくらい利益を生んだのか”であり、これを数値化したものを“優待利回り”という。

株主優待利回りは「年間で受け取る株主優待の(相当)金額/株購入金額×100=株主優待利回り(%)」で求められる。株価は変動するので、購入のタイミングによって利回りも変化するが、お得度を計る目安として活用できる。

例えば、A社の株式100株を10万円で購入し、年2回1,000円分のQUOカードがもらえる銘柄の場合、「2,000円(年間の株主優待相当額)/100,000円(株購入額)×100=2%」となり、優待利回りは2%だ。
◆株主優待利回り例:
A社の株式100株を10万円で購入し年2回1,000円分のQUOカードがもらえる銘柄の場合  
2,000円(年間の株主優待相当額)/100,000円(株購入額)×100
=株主優待利回り2%
加えて配当がある場合は、配当利回りとも合わせた総利回り(配当利回りと優待利回りの合計)を確認してみよう。

100株で3,000円の配当が支払われる場合(1株当たりの配当が30円)、総利回りは、「(3,000円+2,000円)/100,000円×100=5%」となる。
◆配当利回りと合わせた総利回り例:
100株で3,000円の配当が支払われる場合(1株当たりの配当が30円)
(配当3,000円+優待2,000円)/100,000円×100
=総利回り5%
購入時に複数の銘柄で迷った場合は、優待利回りが高い銘柄を選んで投資するという方法もあるのだ。

優待銘柄をお得に運用する方法@ NISAを活用して節税対策

NISA活用がおすすめの理由
・株主優待銘柄は少額投資にも向いているので、NISAとの相性が良い
・株の長期保有で優待内容がアップグレードする銘柄も多数。NISAでは、保有中の配当が5年間非課税で受け取れる
株主優待銘柄が目的の投資は、実は一般NISA(ニーサ、少額投資非課税枠)での運用での相性が良い。

NISAとは、年間120万円までの株式投資や投資信託などで得た利益が5年間非課税になるという、少額投資をする人にとってはとてもお得な制度(※)。つまり、通常は売却で得た値上がり益や配当には20.315%の税金がかかるところ、非課税となる。

優待銘柄は、30万円台ぐらいまでで買えるものが多いため、上述の通り少額投資をする人にとってお得なNISAは相性が良い。

また、優待銘柄の中には長期保有することで優待内容がアップグレードするものも多数ある。保有していく中で5年間、配当を非課税で受け取れるNISA口座で運用すれば節税対策にもなる。

(※)一般NISAは、2023年以降制度の内容が新しくなる。詳細は「NISAとは」に記載。

優待銘柄をお得に運用する方法A ネット証券で手数料を安く抑える

株主優待は、決して大きなリターンを狙うタイプの投資ではない。そのため、後々になって手数料の差が大きく影響してくる。

そこでおすすめしたいのが、ネット証券だ。ネット証券は、インターネットをメインにしている証券会社で、対面式の大手証券に比べて人件費を抑えられる分、手数料が安く設定されていることが多いのだ。次で具体的な手数料を説明する。

100万円以下なら売買手数料0円も ネット証券の手数料

国内株式をやりとりする際の大きな手数料としては、売買手数料がある。例えば、ネット証券の大手SBI証券での「アクティブプラン」という1日の取引金額(約定代金)の合計額に対し売買手数料がかかる定額プランでは100万円以下は0円となる。また取り引きごとに手数料がかかる「スタンダードプラン」では、例えば5万円までは55円、10万円までは99円となっている。(2023年2月2日現在)
 
これが大手証券では、オンラインコースを利用しても、最低でも130円〜3,500円程度、100万円の取り引きをしようとすると880円程度の売買手数料がかかってしまう。さらに従来の支店窓口を通した取り引きになると、この手数料はさらに上がる。

またネット証券の中でも、各社それぞれ特徴があり、売買手数料だけではなく、ポイント特典やキャンペーンなども各ネット証券会社で実施しているので、「顧客満足度ランキング」や利用者の口コミなどを参考にして、自分に合った会社を探してみよう。ネット証券での口座開設は基本的に口座管理手数料が無料で行えるので、複数の口座を持ってから比較するのも1つの方法だ。
◆自分に適した証券会社を探そう!「ネット証券顧客満足度ランキング」

株主優待ライフを長期で楽しむコツとは

ただし、ネット取引は基本的には全てを自己判断で取引することになる。いろいろとアドバイスや説明を受けたい人には、店舗に窓口を構えている対面式の証券会社が向いているだろう。取引手数料は高めに設定されているが、サービスは手厚い。

よりお得に株主優待を楽しみたい人は、各企業の提供する優待品の優待利回りを計算してみるのも一案だが、何よりもまずは自分が欲しい優待かどうかが一番大事だ。優待利回りは高いが、自分の欲しくないものを貰っても意味がないので、ここは要注意でもある。また、NISA制度の活用や取引手数料の軽減など、効率の良い運用によっても株主優待のお得度を高められる。こうした運用面も検討した上で銘柄を購入することが、株主優待ライフを長期で楽しむコツになってくる。

この記事の監修者:市川雄一郎

生活者目線の自由なトークが持ち味。物腰やわらかで明快な講義は、全国に多数のファンがいる。
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。1969年生まれ。グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。「日本経済新聞」「日経ヴェリタス」「朝日新聞」「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などへの原稿執筆・コメント提供のほか、ラジオ日経などのメディア出演も多数。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。
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