企業の収益力、鍵は「従業員の平均年齢」 1歳増で“−1億円”超え?

  • 平均年齢と収益力の比較

    上場企業の従業員の平均年齢は、企業の収益力に影響している?

 昨年9月、東京商工リサーチが「上場企業の従業員の平均年齢に関する調査」を実施し、上場企業の従業員平均年齢が40歳を超えていることが発表された。ビジネスシーンでは、「従業員の平均年齢が高くなると、企業の収益力が落ちる」などとささやかれることもあるが、実際のところはどうなのだろう?
 今後、労働人口全体の「平均年齢」が上がっていくことが予想されるなか、今後の日本経済を考える上で「平均年齢」と「収益力」の関係は、重要なテーマになるかもしれない。
 そこで、オリコンDサイエンスでは、各企業が発表する有価証券報告書(2003年〜2013年)の資料をもとに、「正規従業員の平均年齢が、売上高、営業利益に与える影響」を調査(概要はページ下方に記載)。東証1部上場企業、東証2部上場企業に分けて統計処理を行い、具体的な金額までを推定し、分析を行った。

従業員の平均年齢1歳増で、1億2千万円の収益減!?

 調査の結果、従業員平均年齢が1歳上昇すると、東証1部上場企業においては、年間営業利益が「1億2千万円」減少、東証2部上場企業においては「7200万円」減少する要因になると推定された。一方、統計的にみていくと、売上高については平均年齢による影響はないと判断された。

 さらに、従業員平均年齢が「35歳以上」の企業に絞り、営業利益への影響度合いを統計的に割り出したところ、東証1部では、平均年齢が1歳上昇すると、なんと約「3億9千万円」もの営業利益減少要因となると推定された。同じく東証2部では、「5500万円」の営業利益減少要因となる結果が出ている。

 ちなみに、2014年3月の『会社四季報』(東洋経済新報社)から有名企業の平均年齢を調べてみると、電機大手の日立製作所は「40.2歳」、パナソニックは「44.5歳」、ソニーは「42歳」で、いずれも「35歳以上」。電機業界における日本企業の苦境が取りざたされる今だからこそ、もう一度日本の大手メーカーが世界を席巻した最盛期の勢いを取り戻すためには、思い切った若返りが必要なのかもしれない。

従業員平均年齢「35歳以上」は黄信号? 利益減少の可能性あり

 社歴の長いベテラン社員を多く抱えるほど、給与が利益を圧迫する。組織が硬直化してイノベーションがなくなる……など、「従業員の高齢化」による収益力の低下については、さまざまな意見が出されている。データからはそうした直接的な因果関係があるかどうかは断定できないが、今回の調査結果からは、少なくとも「従業員平均年齢が35歳以上になると、東証1部・2部上場のいずれの企業も営業利益の減少につながる可能性がある」ということが分かった。

 前述した東京商工リサーチの調査では、2013年の上場企業「2318社」のうち、平均年齢が前年より上昇したのは「1551社」で、全体の約7割を占めている。労働人口全体の高齢化が進むなか、いかにして従業員の平均年齢を若く保ち、企業を活性化するかが、収益力を維持する鍵になると言えそうだ。

 自分が今勤めている会社の平均年齢は? また今後、転職などを考えているなら、新天地となる会社のこれからの収益の増減はどのように推移するのだろうか? いずれにしても従業員の年齢だけに縛られて憶測を立てることは、決して賢い選択とはいえないが、10年後、自分の将来について考えていくうえで、1つの判断材料になりえるのかもしれない。
【調査概要】
調査対象:東証1部・東証2部上場企業/単独決算銘柄のみ対象/
12ヶ月決算のみ対象、変則決算は除外/欠損値のある決算期は除外/金融・保険・証券会社は除外
調査データ出典:本決算時の有価証券報告書
調査対象期間:2003年〜2013年の10年間

【分析方法】
 企業の発表する有価証券報告書の資料を基に、東証1部に上場している銘柄と東証2部に上場している銘柄に分け、企業の平均年齢と売上高、営業利益への影響を調査。
※単独決算銘柄のみを採用した理由は、有価証券報告書で発表される企業の平均年齢はあくまでも企業単独の平均年齢であり、単独決算の平均年齢と連結決算の財務データを比較することは適切でないと判断したため。
 なお、従業員平均年齢の比較に当たっては、異常値による影響を小さくするため、従業員平均年齢の中央値を求めて各年の従業員平均年齢とした。従業員平均年齢の従業員には、嘱託職員や契約社員などのいわゆる非正規雇用者は含まれない。
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