投資と預貯金のどちらが重要?バランスのとり方や使い分けなどを解説

投資と預貯金のどちらが重要?バランスのとり方や使い分けなどを解説

資産運用には大きく分けて、「投資」と「預貯金」の2種類があります。計画的に資産を形成していくには、両者のバランスをとり、年齢やリスク許容度などを考えて自分に合った運用を選択することが重要です。

今回は、投資と預貯金のバランスのとり方について、基本的な考え方を解説します。日本人の平均貯蓄額・平均投資額や投資と預貯金の使い分け方などにもふれていますので、ぜひ参考にしてください。
AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

mokuji目次

  1. 投資と預貯金の違いとは?
    1. 投資:資産を増やすために資金を投じること
    2. 預貯金:銀行などに資金を預けること
  2. 日本人の預貯金額と投資額の平均
  3. 投資と預貯金は、どのように使い分けるべき?
    1. 短期的に必要なお金は預貯金で備える
    2. 中期的に必要なお金は預貯金と投資で備える
    3. 長期的に必要なお金は投資で備える
  4. 投資と預貯金のバランスを決めるためのポイント
    1. 投資に回せる余剰資金を把握する
    2. 投資の目標を設定し、計画を練る
    3. リスク許容度を決める
  5. 投資の安全資産とリスク資産の割合の決め方
    1. 安全資産とリスク資産の特性とは?
    2. エイジスライド方式でリスク資産の保有割合を決める方法も
  6. 投資と預貯金のバランスは、年齢やリスク許容度によって異なる

投資と預貯金の違いとは?

初めに、投資と預貯金の主な違いについて解説します。それぞれの運用方法の特徴と、メリット・デメリットの両面を把握しておくことが大切です。

投資:資産を増やすために資金を投じること

投資とは、資金を投じて資産を増やすことです。主な投資対象は、株式や投資信託、不動産、金などです。

投資のメリットには、保有している商品の価値が上がることによって利益が得られる点が挙げられます。例えば、株式を取得した時点での価格よりも、売却した時点での価格のほうが高ければ、増えた分を利益として受け取ることが可能です。反対に、売却時の株価が取得時の株価よりも下落していた場合には、資産が減ってしまいます。
このように、投資のデメリットは元本割れのリスクを抱えている点です。一般的に、高い利益が期待できる商品ほどリスクも高くなる傾向があります。

預貯金:銀行などに資金を預けること

預貯金とは、金融機関に資金を預け入れて、利息を得る方法のことです。代表例として、普通預金や定期預金が挙げられます。

預貯金のメリットは、原則として元本が保証されている点です。万が一、金融機関が経営破綻するようなことがあっても、預金保険制度によって預金者1人あたり元本1,000万円までは保護されます。よって、投資のように元本割れするリスクはほとんどありません。
ただし、日本では長らく超低金利が続いており、日本国内の金融機関の預金には利息がほとんどつかないのが実状です。資産を増やすことが目的である場合、投資と組み合わせて運用する必要があります。

日本人の預貯金額と投資額の平均

日本人の預貯金額と投資額の平均

投資と預貯金のバランスを考える上で参考になるのが、日本人の預貯金額と投資額の平均値です。金融広報中央委員会「知るぽると」が公表している「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」によれば、20代〜70代の平均的な金融資産保有額と内訳は下記のとおりです。
■年代別・金融商品保有額と内訳

年代

金融資産保有額

預貯金

保険(生命保険・損害保険・個人年金保険)

投資(債券、株式、投資信託、金銭信託)

その他(財形貯蓄、その他金融資産)

20代

151万円

75万円(50%)

27万円(18%)

47万円(31%)

3万円(1%)

30代

599万円

287万円(48%)

70万円(12%)

223万円(37%)

19万円(3%)

40代

811万円

340万円(42%)

168万円(21%)

267万円(33%)

34万円(4%)

50代

1,212万円

482万円(40%)

246万円(20%)

411万円(34%)

72万円(6%)

60代

1,862万円

812万円(44%)

337万円(18%)

665万円(36%)

50万円(3%)

70代

1,683万円

742万円(44%)

286万円(17%)

633万円(38%)

22万円(1%)

※カッコ内の数字は金融資産保有額全体に占める割合。
※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果 種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」をもとに作成。
全世代において資産に占める預貯金の割合は、概ね40〜50%程度投資に関しては30〜40%程度であることがわかります。全体的な傾向としては、投資よりも預貯金の比率が高いのが実状です。

投資と預貯金は、どのように使い分けるべき?

投資と預貯金を効果的に使い分けるには、必要なお金を短期・中期・長期の3つに分けて考えるといいでしょう。それぞれの期間ごとに、適した資産形成の方法を解説します。

短期的に必要なお金は預貯金で備える

短期的に必要なお金とは、1年以内に使う予定のある資金のことを指します。例えば、家賃や住宅ローン、水道光熱費、食費、交通費、学費などは、当面必要なお金の代表例です。こうした1年間で、必要となるのが確実な生活費については、預貯金で備えていくことをおすすめします。

中期的に必要なお金は預貯金と投資で備える

中期的に必要なお金とは、1〜10年以内に使う予定のある資金のことです。すぐに必要というわけではないものの、用途や必要な時期がすでに決まっているお金のことを指します。
例えば、住宅購入の頭金や教育資金、結婚資金、旅行資金、車の購入費などです。

これらの出費の特徴として、一時的にまとまった金額が必要になる点が挙げられます。よって、コツコツと貯金をしていくのもひとつの方法ですが、効率良く資金を確保形成するためには投資も組み合わせるのが得策です。

長期的に必要なお金は投資で備える

長期的に必要なお金とは、主に老後資金のことです。定年退職後、収入の柱が公的年金になった際の生活費などを用意しておくことを指します。投資の基本とされる長期・積立・分散を実践するのに適した投資信託などを購入して、複利効果を活かしながら資産形成していくことが大切です。

長期的に必要なお金を貯めるには、iDeCoやNISAといった非課税制度を活用するのもおすすめです。
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のことで、運用益が非課税となる私的年金を指します。掛金が全額控除されるので所得税や住民税の節税効果が得られます。また、iDeCoで運用した資産を受け取るときに控除が適用される点もメリットです。
iDeCoについては以下の記事も参考にしてください。
iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットは?節税効果を徹底解説
NISAは「少額投資非課税制度」のことで、投資によって得た利益(売却益・配当・分配金)が非課税になる点が特徴です。非課税投資枠には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類があり、両者を併用することもできます。つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円までの投資が非課税の対象となり、2つの投資枠を合計した総枠は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)です。
NISAを活用して少額ずつ投資信託や株式を購入していくことにより、節税効果を得ながら長期的に資産を形成できます。
NISAについては以下の記事も参考にしてください。
新NISAに年齢制限はある?20〜60代の運用ポイントも解説

投資と預貯金のバランスを決めるためのポイント

投資と預貯金のバランスを決めるためのポイント

続いては、投資と預貯金のバランスを見極めるにあたって、実践したい3つのポイントを紹介します。バランスのとり方は人によって異なることから、現在の状況と今後のライフイベントなどを考慮することが大切です。

投資に回せる余剰資金を把握する

まずは、現状を把握することが重要です。家計における収支を洗い出し、現状どれだけの余剰資金があるのかを把握します。余剰資金とは、当面必要な生活費や緊急時に使う備えなどを除いた資金のことです。投資は原則として余剰資金で行います

ただし、余剰資金をすべて投資に回すのは得策ではありません。短・中期的な出費が発生することも踏まえると、いつでも利用できる現金を手元に残しておく必要もあるでしょう。
例えば、今後数年内に結婚を予定している人であれば、挙式や披露宴、新生活に向けた蓄えを確保しておかなくてはなりません。こうしたライフイベントも考慮しつつ、投資と預貯金のバランスを決めることが重要です。

投資の目標を設定し、計画を練る

いつまでにいくらの資産を形成したいのかを決めることも重要です。目標金額によって、投資戦略が異なるからです。
例えば、「◯年後に△万円貯める」といった目標が明確になることによって、毎月の積立額や必要な利回りを逆算できます。金融庁が提供している「つみたてシミュレーター」なども活用しながら、毎月の積立額や投資対象を決めるのも良い方法です。

投資の目標が不明確なまま資産運用を始めてしまうと、後で想定よりも資産が増えていないことに気づいたり、必要以上にハイリスク・ハイリターンの金融商品を選んでしまったりする原因にもなりかねません。
具体的な用途や目的を決めた上で投資していくことによって、中長期的な視点に立って資産を形成していくことができます。

リスク許容度を決める

投資をする際には、自分がどれだけのリスクを受け入れられるか、自身のリスク許容度を把握しておくことも大切なポイントです。
リスク許容度は、年齢や家族構成、手元資金などの条件を考慮して決めるのが基本です。例えば、子供の学費がかかる年代の人がハイリスクの金融商品に投資してしまうと、価格が下落した際の損失で、教育費に充てられるお金が大きく減ってしまうかもしれません。こうしたケースでは、投資を行うにしてもできるだけリスクの低い金融商品を選ぶ必要があるでしょう。

投資の安全資産とリスク資産の割合の決め方

投資する際に押さえておきたい考え方として、「安全資産」と「リスク資産」が挙げられます。各資産がどのようなものなのかを解説した上で、これらをどのような割合で保有すべきかについて、詳しく見ていきましょう。

安全資産とリスク資産の特性とは?

安全資産とは、将来的に価値が目減りするリスクが比較的低いとされる資産のことです。国債や貯蓄型保険、預貯金などは、価値が大きく上がる可能性が低い一方で、元本割れなどのリスクが低い商品とされています。
一方のリスク資産とは、値動きが大きく、将来の収益を予測するのが困難な資産のことです。値動きが大きいということは、それだけ高収益を期待できる反面、損失を被るおそれもあることを意味しています。リスク資産に分類されるのは、株式やETF、投資信託などです。

リスク資産と安全資産にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが優れた資産形成の方法であるかは断定できません。預貯金は安全資産のひとつですが、前述のとおり超低金利が続いている日本国内の金融機関に預けても、資産を効果的に増やすことはできないのが実状です。

これに対して、株式などの金融商品の中には、リスクが高い反面、大きな収益を期待できるものもあります。リスク資産も活用方法次第では大きな収益につながる可能性があるため、デメリットばかりとも言い切れません。
そのため、リスク資産と安全資産のメリット・デメリットを把握した上で、両者の特性を活かした運用を心掛けることが大切です。

エイジスライド方式でリスク資産の保有割合を決める方法も

リスク資産の保有割合を決める際の目安として、「エイジスライド方式」を活用する方法もあります。エイジスライド方式とは、現在の年齢を120から引くことにより、リスク資産を保有できる割合が算出できるという考え方のことです。例えば、現在40歳の人なら「120−40=80%」までリスク資産を保有できることになります。

ただし、エイジスライド方式で算出されるリスク資産の割合には、現代社会における長寿化が加味されているため、比較的高めになりがちです。そのため、もうひとつの考え方として、年齢を100から引いた数値をリスク資産の割合とする方法もあります。この考え方にもとづくと、現在40歳の人が保有できるリスク資産の割合は「100−40=60%」です。

これらの計算は、あくまでも目安を知るための方法です。実際には、余剰資金や資産形成の目標額、リスク許容度、家族構成、ライフスタイルなどによって、適切なリスク資産の割合は異なります。
年齢はこれらの要因のうちのひとつの側面にすぎないことから、より総合的な視点でリスク資産の適切な割合を見極めていくことが大切です。

投資と預貯金のバランスは、年齢やリスク許容度によって異なる

投資と預貯金のバランスは年齢、家族構成、ライフスタイルなどによって異なります。また、資産形成の目標額やリスク許容度によっても千差万別です。
統計的には、投資割合の平均は資産の30〜40%程度ですが、あくまでも平均のため各々の状況にあわせて適切なバランスを決めることが重要です。

長期的な資産形成を考えるなら、長期・積立・分散に適した投資信託への投資を検討することをおすすめします。投資用の口座を開設する際には、複数の銀行や証券会社を比較検討し、自分に合った金融機関を見極めることが大切です。
金融機関によって取り扱っている投資信託の種類や数のほか、手数料も異なります。実際に金融機関を利用した人の口コミなども参考にしながら、どの金融機関で口座を開設するべきか検討することが重要です。

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AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。編集プロダクションで、Web・紙媒体問わず主に金融系コンテンツの制作を担当後、HRテック企業に制作ディレクターとして入社。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

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