ネット証券の口座を複数持つメリットとデメリット
そこで、まずはネット証券を1社に絞らずに、複数のネット証券に口座を開設することを考えてみましょう。メリット・デメリットを挙げてわかりやすく解説し、知っておくと得をする豆知識も紹介します。
例えば、ライブスター証券では、口座開設後2ヶ月間の取引手数料が無料となりますので、取引の練習として気軽に売買することができます。また楽天証券では、開設後に一定条件を満たせば、抽選で5000円相当の楽天ポイントがプレゼントされます。楽天市場を利用する人には魅力的です。
(※2017年3月末時点)
ネット証券を選ぶことに時間を費やすより、まずは気になるネット証券で口座を開設し、実際に各社が提供する取引ツールやアプリの売買画面、株価情報ページなどを実際に使ってみて、自分にとって最もよいネット証券を絞り込む方が効率的です。開設の手続きに少々手間はかかりますが、これから紹介するメリットを考えれば必要なことと言えるでしょう。
【メリット1】手数料が最も安い証券会社で取引ができる
手数料体系は各社異なりますが、基本的には取引ごとの約定代金に応じて手数料が変わるという仕組みです。一例を挙げてみましょう。
・「10万円」で1株を購入する場合の税込み手数料
A社…150円
B社…0円
C社…97円
(※2017年3月末時点)
・「50万円」で1株を購入する場合の税込み手数料
A社…293円
B社…500円
C社…250円
(※2017年3月末時点)
このように取引金額によって、手数料の安いネット証券が異なるため、複数の口座があると手数料の安い口座で取引ができます。
【メリット2】幅広い金融商品の取引が可能になる
ネット証券で取引できるものは、「日本株式」だけでなく「外国株式」「投資信託」「債券」など多岐にわたります。しかし、証券会社によって「取引できるもの」「取引できないもの」がありますので、複数の口座を持つことで分散投資をするのに有効です。
【メリット3】投資についての情報源が増える
複数の口座を持つだけで、ネット証券各社が提供している投資情報を入手できます。例えば、マネックス証券では2015年実績で200本以上のオンラインセミナーが配信されました。また楽天証券では「日経テレコン21」という情報データベースを利用でき、新聞記事や雑誌記事の検索・情報収集が可能です。ネット証券各社で情報にも特色がありますので、うまく利用したいものです。
【メリット4】自分に合った取引ツール・取引方法を見つけられる
画面の表示や取引までの手順は、実際に使ってみなければわかりませんが、複数の口座があれば自分に合ったものを探すことができます。
また銘柄によって、都合の良い注文方法の使い分けも可能です。買い注文と同時に売り注文を出せるなど、細かな設定が可能な自動売買システムの口座があれば重宝します。
【メリット5】システム障害で売買できないリスクを回避できる
特に株価が暴落した時にシステム障害が起こると、購入のチャンスを逃すことになります。また、売りたい銘柄の売却注文を出せないと大きな損失になりかねません。
他のネット証券に信用取引口座があると、株価が下がれば利益となる空売りをすることで損失を抑えることができます。
例えば、株価が10万円から9万円、そして8万円に下がった場合を考えてみましょう。A社で株を持っているものの、システム障害で売却ができず、2万円の損失となりました。しかし信用取引口座のあるB社で、株価が9万円の時点で証券会社から借りた株を売却(空売り)したとします。株価が8万円となったときに買い戻し、株を証券会社に返却すると、差額の1万円が利益として手元に残るわけです。A社で発生する2万円の損失を、B社での空売りによって、トータルでは1万円の損失に抑えられたということになります。本来ならA社で売却したい株を、他の証券会社で代わりに売却すると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
【デメリット1】資金が分散する
複数のネット証券で取引を行うと投資資金が分散するため、まとまった額の取引をしたいときに資金を移し替えなければならない場合が発生します。しかし口座だけ開設しておき、購入するタイミングで資金を入金すれば問題はありません。
【デメリット2】口座のアカウント管理が必要になる
ネット証券ではログインするための「アカウントID」と「パスワード」が必ず発行されます。それぞれのパスワードを管理するという負担が発生するのは避けられません。
この2つのデメリットは、人によって重要度は異なる内容です。複数のネット証券の口座を持つことで、「コスト」「情報」「リスク管理」などの面で有利な口座を選んで取引ができるメリットと、「資金」「口座の管理」という点を比較するすると、複数口座のメリットの方が大きいと感じるのではないでしょうか。
【ポイント1】国内株式を別口座に移す手数料は無料の場合が多い
口座をまとめたい場合は、現在保管している証券会社に書類を提出するだけで他社へ移すことができます。受け入れ側の証券会社の手数料は無料で、送る側の証券会社では数千円程度かかる場合がありますが、国内株式は手数料を無料にしているところが多く、気軽にまとめることができます。
【ポイント2】新規公開株の当せん率が上がる
IPOと呼ばれる新規公開株は、上場後に株価が値上がりすることが多く、大変人気があります。購入申し込み者が多く当せん倍率も高いのですが、複数の証券会社から申し込むことによって当せんの確率が上がります。新規公開株の販売時には、多くの証券会社が株数を分担して販売窓口となるためです。
【ポイント3】複数の口座がある場合の節税方法
特定口座の「源泉徴収あり」を選択して口座開設している場合、確定申告をしなくても自動的に売却益から税金が徴収されます。しかしA社で10万円の利益、B社で10万円の損失が出た場合、確定申告をすればA社で徴収された税金を還付してもらえます。株式の売却益の税金は20.315%ですので、しっかり申告するようにしましょう。
現在だけでなく将来的に投資する可能性のある取引金額・金融商品を踏まえ、情報提供に力を入れているネット証券で複数の口座を開設しておけば、1社で取引するよりも有利に投資できます。例として挙げているネット証券はあくまで一例ですので、ぜひ他のネット証券も併せて検討し、複数の口座を開設しておきましょう。