株式の長期保有とは?メリット・デメリットや向いている人を解説

株式の長期保有とは?メリット・デメリットや向いている人を解説

株式投資では、短期的に何度も売買して利益を得る方法もありますが、長期的に保有し続けて利益獲得を目指すことも可能です。長期保有にはさまざまなメリットがある一方でデメリットもあるため、株式投資を始める前に長期保有の基本的な知識を押さえておきましょう。

本記事では、株式の長期保有のメリット・デメリットや、長期保有が向いている人の特徴長期保有を行う際のコツを解説します。株式投資が気になっている人やこれから始めたい人は、投資の仕方を考える際の参考にしてください。
AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

mokuji目次

  1. 株式の長期保有とは、10年以上の長期にわたって同一の株式を保有し続けること
  2. 株式の長期保有のメリット
    1. 複利効果を得やすい
    2. 値動きに伴う精神的な負担が少ない
    3. 売買コストを抑えやすい
    4. 株主優待を長期的に獲得できる
  3. 株式の長期保有のデメリット
    1. 売却による利益を得るまで時間がかかる
    2. 損失が出たら挽回が難しい場合がある
    3. 短期保有ほど大きな利益を獲得できない可能性がある
  4. 株式の長期保有に向いている人の特徴
    1. 投資初心者
    2. 毎日相場をチェックするのが難しい人
    3. 長期的に企業の成長を見守れる人
  5. 株式の長期保有のコツ
    1. 短期的な値動きに一喜一憂しない
    2. 分散投資・積立投資も活用する
  6. 長期保有を前提とした株式投資を検討してみよう

株式の長期保有とは、10年以上の長期にわたって同一の株式を保有し続けること

株式の長期保有とは、一般的には10年以上の長期にわたって同一の株式を保有し続けることを指す言葉です。
1日から1年程度は短期保有、数年〜10年未満程度は中期保有と呼ばれます。

とはいえ、厳密な定義はありません。短期的な売買を前提とせず、長期的に企業の成長を見守っていく場合は長期保有だといえるでしょう。

一方、短期保有は、短い期間で売買を繰り返すことで、値上がり益を何度も獲得して利益を増やそうとする投資方法です。株式のデイトレードなどは、短期保有の代表例です。

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株式の長期保有のメリット

株式の長期保有のメリット

株式の長期保有には、さまざまなメリットがあります。株式の売買に不慣れで、短期間に売買を繰り返すのが不安な投資初心者にとっては、長期保有によるメリットを感じやすいかもしれません。下記の4点は、株式の長期保有の代表的なメリットです。

複利効果を得やすい

株式の長期保有には、複利効果を得やすいというメリットがあります。株式を保有していると、年に1回から数回、配当金が支払われることがあります。この配当金を再度投資に回すことで、複利効果を得られます。

複利効果とは、投資で獲得した利益を再投資することで、利益から利益が生まれる状況を作り、資産を増やせる効果のことです。

例えば、株価に対する年間の配当金額の割合を示す配当利回りが2%の株式を、100万円分所有していた場合、配当金をそのまま受け取る場合は、決算後に2万円もらえます。
わかりやすく考えるために株価が変動しないと想定して、この2万円をさらに同じ銘柄の株式購入にあてた場合、翌年は102万円に対する配当金2万400円を受け取れるようになります。2万円を再投資に回さず、手元に現金として保管した場合は、翌年の配当金も2万円です。

400円の差は小さいと感じるかもしれませんが、3年、4年と同様に再投資を繰り返すと、雪だるま式に配当金は増えていき、長期間保有するほど差は大きくなります。

この例は、株価や税金、配当利回りの変動を考慮しない架空の計算ですが、実際の投資でも、配当金や分配金をその都度受け取って手元に保管するよりも、再投資に回したほうが利益を拡大しやすくなります。

ただし、複利効果によって利益が増えるのは、株価が下落せずに利益を蓄積できた場合であるため、株価の変動などによっては想定どおりの利益を獲得できません。株式は元本保証のない商品だという点には注意してください。

なお、細かく再投資を行いたい場合、単元未満株の取り扱いがある証券会社を選ぶといいでしょう。株式の売買は、基本的に100株単位で行う必要がありますが、1株単位などでも売買ができる単元未満株なら、少額の資金でもこまめな再投資が可能です。
単元未満株の取り扱いの有無や、単元未満で購入できる株式の銘柄は証券会社によって異なるため、確認してみてください。

値動きに伴う精神的な負担が少ない

株式の長期保有は、値動きに伴う精神的な負担が少ない点もメリットです。投資を行う際、最初から「◯年以上は長期保有する」と決めておけば、短期的に株価が値下がりしたとしても、慌てず長い目で回復を待つことができます。

そもそも長期保有を前提として株式を購入したのであれば、毎日の値動きに目を光らせる必要もありません。株価のチャートに張り付いているわけにいかない人や、保有期間を定めずにただ保有しているだけだと株価が気になって落ち着かないといった人は、長期保有を意識した投資の仕方を検討してみましょう。

長期保有を前提とした投資で意識するのは、目先の株価ではなく、10年以上先の事業の将来性となるため、短期的に売買する場合よりも値動きを気にするストレスは少ないといえます。

売買コストを抑えやすい

売買コストを抑えやすい点も、株式の長期保有のメリットです。
株式を売買するためには、通常、売買手数料がかかります。株式を短期的に何度も売買すると、それだけで手数料がかさむ可能性もあります。長期保有を前提にした株式投資は売買を頻繁に行わないため、その分コストを抑えた投資が可能です。

株主優待を長期的に獲得できる

株式の長期保有は、株主優待を継続して獲得できるといったメリットもあります。国内株式の中には、株式を保有している株主に対し、自社の商品・サービスの割引券といった株主優待を提供する銘柄もあります。

株主優待を受けるには、各企業が定めている権利確定日から2営業日前(権利付最終売買日)までに株式を保有していなければなりませんが、長期保有であれば権利確定日を気にせずに、毎年継続的に株主優待を受け取ることが可能です。

長期保有をしていると、保有期間中は、株主優待を小さなボーナスとして楽しめます。中には、長期保有していると優待内容が良くなる株式もあります。
ただし、株主優待制度があるのは、国内株式の一部の銘柄のみです。優待制度を設けていない企業もあり、また優待の内容も企業によってさまざまです。株主優待によるメリットも重視する場合、事前に内容を確認しておきましょう。

株式の長期保有のデメリット

株式の長期保有のデメリット

株式の長期保有には、メリットだけでなくデメリットもあります。下記のようなデメリットがあることも念頭に置いて、長期保有を行うか検討することが大切です。

売却による利益を得るまで時間がかかる

株式の長期保有には、売却による利益を得るまで時間がかかるというデメリットがあります。
長期保有の期間中に含み益や含み損が出ても、短期的な値動きに左右されないのが長期保有であるため、基本的には最初に決めた売却時期が来るまでは利益や損失は確定しません。投資で利益を得られるのは、10年以上先になります。

そのあいだは、長期的に現金化できない資産を持つことになるため、その分、ほかの用途に回す資金は限られてしまいます。

損失が出たら挽回が難しい場合がある

株式の長期保有では、損失が出たら、挽回が難しい場合がある点もデメリットです。株式の長期保有では、利益が確定するまで時間がかかるため、その結果を受けてさらに資産運用しようとしても時間は限られています。

例えば、老後資金のために積立形式でコツコツ株式を購入していたものの、技術革新によって投資先の銘柄の事業見通しが急に悪くなってきたため売却しようとしたが、株価が購入当初より下落していたといったケースを想定してみます。

売却したくなった時期が、まだ老後まで数十年残されている場合、挽回するためにさまざまな方法を考えることも可能です。しかし、老後まであと数年というタイミングで損失が出そうになっている場合、そこからほかの方法で資産運用を始めても、損失を挽回するのは困難かもしれません。

未来を予測することはできないため、確実に損失が出ない投資先を見つけることはできませんが、株式の長期保有では投資先を厳選することが重要です。
また、1つの銘柄で損失が出ても問題ないように、分散投資などのリスクを抑える投資手法も活用しましょう。

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短期保有ほど大きな利益を獲得できない可能性がある

資金が必要になるタイミングまで値動きを気にせず保有を続ける長期保有は、短期で売買する場合に比べて大きな利益につながらない可能性もあります。

短期保有の株式は、相場が値上がりしたタイミングで売却を行い、利益を確定します。その後、回収した資金で別の株式を購入して、相場を見計らって売却することを繰り返すのが短期保有です。
株価は、1ヵ月で数十%値上がりするケースもあるため、タイミング良く購入と売却を繰り返せば、大きな利益を獲得できます。

とはいえ長期保有は、短期的な値下がりで損失が発生するリスクを抑えられます。その点も考慮し、長期保有を選択するか検討しましょう。

株式の長期保有に向いている人の特徴

株式の長期保有に向いている人の特徴

株式の長期保有にはメリットとデメリットがあるため、長期保有に向いている人も向いていない人もいます。株式の長期保有に向いているのは、下記のような特徴がある人です。

投資初心者

株式の長期保有は、投資初心者に向いている投資手法です。投資初心者の場合、株価の短期的な値動きを予測するのは簡単ではありません。また、短期間の値動きに気を取られすぎると、少し値下がりしただけで損失の拡大を恐れて売却してしまうケースもあります。

最初は、日頃から利用している企業や応援したい企業の株式を長期保有目的で購入し、株式の値動きの感覚を理解してから短期保有目的の投資を始めても遅くはありません。

毎日相場をチェックするのが難しい人

毎日相場をチェックするのが難しい人は、値動きのタイミングに応じて素早く注文を出す短期保有は困難なため、長期保有が向いています。
株式の長期保有であれば、相場をこまめにチェックする必要はありません。むしろ、時々推移を確認する程度にとどめておいたほうが、ストレスなく投資を続けられます。
忙しい人や、日々の株価の変動をチェックするのが面倒な人は、長期保有を検討してみましょう。

長期的に企業の成長を見守れる人

長期的に企業の成長を見守れる人も、株式の長期保有に向いています。企業の株式を購入することは、その企業を応援することでもあります。

短期的な投資利益を追求するのではなく、今後成長が見込めそうな分野の企業や、理念に共感できる企業などを見つけて投資を行い、長期的に株主として成長を見守っていくのも楽しみ方のひとつです。
応援したい企業がある人は、その企業の株式を長期保有目的で購入してもいいかもしれません。

株式の長期保有のコツ

株式の長期保有のコツ

株式の長期保有で、ストレスなく投資するためにはコツがあります。投資初心者などで株式の長期保有に臨む場合は、下記の2点を心にとめておくことをおすすめします。

短期的な値動きに一喜一憂しない

短期的な値動きがあるたびに動揺してしまうと、長期保有を行うのは困難です。場合によっては、値下がりに不安が募り、長期保有を前提としていた株式を短期で売却し、損失を出してしまう可能性もあります。

長期保有を前提として株式を購入したのであれば、短期的な値動きを気にしすぎずに、淡々と保有を続けましょう。10年以上株式を保有していれば、企業の業績が変動して株価が下落することもあります。

リーマンショックや新型コロナウイルス感染症のように、市場全体に大きな影響を及ぼす事態が発生することもありますが、長期的に見れば全体的な株価は回復しています。

とはいえ、投資先の企業が倒産すると株式の価値はほとんど失われてしまうため、倒産につながるようなニュースには気を配らなければなりません。

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分散投資・積立投資も活用する

株式を長期保有する場合、分散投資や積立投資を活用し、リスクを抑えることも重要です。
長期保有を前提に株式を購入した企業が、思いどおりに成長するとは限りません。特定の企業の株式を特定の時期に購入して保有するのではなく、投資先や購入のタイミングを変えることで、リスクを分散させましょう。

例えば、1つの銘柄でなく、複数の銘柄に分散投資していれば、株価が期待ほど上がらない銘柄があったとしても、ほかの銘柄の値上がり益でカバーできる可能性があります。

また、一度にまとまった株式を購入すると、「後から見れば株価が高い時期に大量に株式を購入していた」といった事態になることもあります。しかし、定期的に一定額を購入する積立投資では、価格を平準化させることが可能です。

長期保有を前提とした株式投資を検討してみよう

株式投資は値動きのリスクがある投資方法ですが、長期保有を前提として分散投資や積立投資を行うことで、ある程度リスクを抑えられます。株式投資が気になるものの、値動きを追う自信がない人や、成長を応援したい企業がある人は、長期保有目的で株式投資を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、株式投資を行うためには、証券会社で口座を開設しなければなりません。証券会社ごとに特徴は異なるため、自分に合った証券会社を選ぶことが重要です。

オリコンでは、日本最大級の規模で調査を行い、毎年「ネット証券会社 オリコン顧客満足度ランキング」を発表しています。取引手数料や取引のしやすさのほか、分析ツールの使いやすさなど、さまざまな視点でネット証券会社を比較検討できますので、ぜひ参考にしてください。
AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。編集プロダクションで、Web・紙媒体問わず主に金融系コンテンツの制作を担当後、HRテック企業に制作ディレクターとして入社。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

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