チャートで簡単診断、株で得た利益に確定申告は必要? 投資初心者が知っておきたい確定申告の基本
■株で得る主な利益は、「譲渡所得」と「配当金・分配金」の2つ
(1) 譲渡所得(譲渡益)
(2) 配当所得や利子所得 (配当金・分配金)
■確定申告が必要となる基本の3つのケース
■口座の種類で、確定申告が必要かは変わる
【表】証券口座の種類と特徴
■確定申告不要でも、申告によって節税になる2つのケース 「譲渡損失の繰越控除」とは?
「譲渡損失の繰越控除」で、3年間の譲渡所得を相殺
譲渡益がなく、配当金や分配金のみなら、還付金を得られる可能性も
■【チャートで診断】あなたは確定申告が必要?
■確定申告の申請提出は3パターン、オンラインで完了する「e-Tax」がおすすめ
■確定申告漏れは、ペナルティーを受ける場合も
株で得る主な利益は、「譲渡所得」と「配当金・分配金」の2つ
(1)譲渡所得(譲渡益)
ただし、NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)口座で運用している場合は、上限額内の投資から得た利益は非課税となるので、配当金・分配金や譲渡益に所得税および住民税はかからない。
(2)配当所得や利子所得 (配当金・分配金)
確定申告が必要となる基本の3つのケース
自営業やフリーランスの人にとっては、毎年行う確定申告だが、勤務先で「年末調整」を行う会社員や公務員にとってはなじみのない制度である場合も多いだろう。ただし、株式など投資信託で利益を得た場合は所得と見なされ、税金が課されるので、特に次のケースでは、会社員も確定申告をしなくてはならない。
(2) 源泉徴収された給与所得以外に、合計が20万円を超える所得(副業収入や株の譲渡益など、退職所得は除く)がある
(3) 給与を2カ所から受け取り、年末調整されなかった給与とそのほかの所得金額が合計20万円を超える
一方で、上記に当てはまらないような確定申告が不要なケースでも、利益・損失の有無によっては確定申告をした方が節税になる場合もあるので、自分はどのケースなのかをチェックしよう。
「給与を1カ所から受けていて、給与以外の所得(副業の収入、株の譲渡益など)合計額が20万円以下」の場合、“所得税”に関する確定申告は不要だ。気を付けたいのは、その場合でも“住民税”は課税対象となり、住所地の市役所税務課へ申告する必要があるということ。
確定申告をした場合は自動的に住民税の申告もされるので不要だが、確定申告をしない場合は、住民税について申告漏れがないように注意しよう。源泉徴収ありの特定口座では、住民税も源泉徴収されているので申告が不要だ。
口座の種類で、確定申告が必要かは変わる
【表】証券口座の種類と特徴
証券口座の種類 | 確定申告の要・不要 | 特徴 |
源泉徴収ありの特定口座 | 不要 | 譲渡益の所得税・住民税が源泉徴収されるので、確定申告は不要 |
源泉徴収なしの特定口座 | 必要 | 確定申告は必要だが、年間取引報告書をもとに申告書を作成できる |
一般口座 | 必要 | 譲渡益が出た際には、自分で損益計算をしなくてはならない |
「源泉徴収なしの特定口座」を選んだ場合は、確定申告が必要となるが、年間取引報告書に基づいて比較的簡便に申告書を作成できる。なお、2019年4月1日以後の確定申告より、年間取引報告書自体の添付は不要となっている。
対して「一般口座」は、年間取引報告書が作成されないので確定申告が必要になる場合には、自分で損益計算しなければならない。ネット証券での取り引きであれば取引履歴が確認できるが、窓口や電話で注文は、取り引きの度に送られてくる「売買報告書」を確認し、ミスのないよう一つ一つの取り引きについて計算する必要があり、複数の株式取引があった場合にはより煩雑になってしまう。
つまり、「源泉徴収ありの特定口座」で運用する人以外には、基本的に確定申告が必要となる。
確定申告不要でも、申告によって節税になる2つのケース 「譲渡損失の繰越控除」とは?
(1)「譲渡損失の繰越控除」で、3年間の譲渡所得を相殺
もしそれでもなお、譲渡損失が残っているのであれば、「譲渡損失の繰越控除」のために確定申告した方がいい。この手続きを行えば、翌年以降3年間にわたって各年の上場株式等に係る譲渡所得・配当所得等との相殺が可能となり、税金が戻ってくる可能性があるからだ。
ただし、NISA口座で運用されている株式などの譲渡益や配当金については、「譲渡損失の繰越控除」の対象外となる。
(2)譲渡益がなく、配当金や分配金のみなら、還付金を得られる可能性も
配当控除とは、確定申告で受けることができる所得控除の一つ。配当控除を受けるためには、確定申告で総合課税を選択する必要があることを覚えておこう。
課税所得とは、所得税の課税対象になる所得のことで、収入から必要経費などを除いた「所得」から、各種所得控除を差し引いた金額のことだ。
【チャートで診断】あなたは確定申告が必要?
加えて、損益(赤字)が出た人、また取り引きはしていないが695万円以下の配当金・分配金のみを受け取った人は、還付金が得られる可能性が高いので、確定申告で申告分離課税または総合課税を選択した方がいいだろう。
確定申告の申請提出は3パターン、オンラインで完了する「e-Tax」がおすすめ
(2) 郵送で提出する
(3) インターネットを使って「e-Tax」で提出する
国税庁のホームページにはe-Taxの利用方法のほか、申告手続きについて詳しく載っている。「申告書等作成コーナー」(国税庁)では、e-Tax、書面提出を問わずパソコンで申告書が作成できるので、確定申告をする人はのぞいてみるといいだろう。
確定申告漏れは、ペナルティーを受ける場合も
万が一、申告が漏れてしまった場合には、“無申告”のペナルティーとして無申告加算税が課される場合がある。原則として、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超えると20%が加算された金額を納めなくてはならない。
投資している人は、まずは自分が確定申告をしなければいけないのか、もしくは税金が返ってくるから確定申告をした方がいいのかどうかを調べることから始めよう。そして確定申告が必要であれば、申告の期限内にスムーズに手続きができるように、早めに少しずつ準備を始めておくとよいだろう。
この記事の監修者:市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。1969年生まれ。グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。「日本経済新聞」「日経ヴェリタス」「朝日新聞」「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などへの原稿執筆・コメント提供のほか、ラジオ日経などのメディア出演も多数。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。
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